ラムの映画&本ライフ

ラムの趣味である映画と本のレビューです。★5で満点、10通りに評価しています。
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我が家の問題 ★★★★☆

(2014年8月12日再読)

我が家の問題我が家の問題
(2011/07/05)
奥田 英朗

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(STORY)
完璧すぎる妻のおかげで帰宅恐怖症になった夫(「甘い生活?}より)
夫は仕事ができないらしいと気づいた妻(「ハズバンド}より)
どんな家庭にもささやかな問題がある。あなたにも思い当たるフシがある、家庭を題材にした6つのドラマ。


(REVIEW)
どの家庭にも大なり小なり問題はあります。
一見幸せそうな家庭でも、見えない問題や秘密をもっています。
或る時は妻の視点から、ある時は夫の視点から、ある時は子供の視点から描く奥田さん、
キャラ=奥田さんと思えるような、的のつく心理。
ひとつ、ひとつの描写がリアル。うなづくことばかり。
一体あなたは何者ですか?と、毎回聞きたくなります。
きっと作家という職柄、冷ややかな目で見ているからでしょう。

ささやかな事が積み重なって重みになっていく。
ストレスが重なり、体に異常が出始め、家族の間に亀裂が走り、ギリギリまで追い詰められていく。
我慢の限界に達した時、さあどうなるか?
自分が思い当たる話は共感するし、そうでなくても身近な問題だから見逃すことはできないのです。
その結末は?というと、奥田さんの人柄なのか、やんわりと暖かさを残してくれます。
読んだ後、元気をもらえるビタミン剤のようです。

だから何度でも読みたくなる奥田わーるど。
家庭で行き詰った時、心に元気がなくなった時、また読みたいです。

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家日和 ★★★★☆

(2014年4月21日再読)

家日和家日和
(2007/04)
奥田 英朗

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(Story)
専業主婦の紀子は不要になった折り畳みテーブルをネットオークションに出品した。入札され、無事に取引成立したことですっかりオークションにはまってしまった。紀子は調子づいて夫の所有物を内緒で出品してしまう(「サニーディ」より)。他5話収録。



(review)
舞台は家。
様々な家庭があるように、様々なドラマが生まれてきます。
主人公は主婦であったり、夫であったり・・ほら、あなたであったり・・
本作を再読しようとしたきっかけは、専業主婦(夫)の心理を知りたいためであり、どの作品も共感しました。

<サニーディ>
ネットオークションにはまった主婦の話。入札がついた時の喜び、メールのやり取り、普段かかわることのない世間とつながりともてた喜び。そんな主婦の心情が決め細やかく描かれています。調子にのったら、もう誰も止められない、夫の所用物まで出品してしまうだから。良心が痛み、ここで取り消そうかと思ったら遅し。人気商品となって、あわやどうする?と思ったら、ラスト、この手があったか!と笑いました。

<ここが青山>
突然、会社が倒産し、専業主夫となった話。自分の変わりに妻が働きに出るため、家事を引き受けたものの、初めは七転八倒。しだいにはまっていくのは、あっているんではないですか?裕輔さん。しかし、専業主夫という肩身の狭さもある。でも、あせってもしょうがないのんびりと行こうと思わせる一作でした。

<家においでよ>
別居した男の話。「自分の理想の家をつくる」これ、わかります。配慮がいると、自分の思い通りにはできないものなのです。いない方が快適?いえいえ、やっぱ連れ添った奥さんは大事なのであります。

<グレープフルーツ・モンスター>
在宅主婦も妄想の話。妄想の世界の浮気は罪にはならない!?そして思う、別な人生もあったかなと。こも気持ち、わかります。

<夫とカーテン>
転職し、自営をすると言い出した夫を持つ妻の話。楽天的で夢を追いかけているような男を持つ妻は、地味でもいい、安定した生活を望んでいる。しかし、その一方で自分自身も得意のイラストでブレイクすることも望んでいる。現実は夫の良さを知り、平和にまとまっていくのでした。めでたし^^

<妻と玄米御飯>
「ロスハ」をいうものにはまった妻を持つ人気作家の話。ご自身が同職業であるため、作家さんの心情がきめ細やかです。「思ったことを言えないから文章に著していることがある」これ、わかります。

最後はどうなると追いつめられても、無事にまるく収まる。だから、奥田わーるとは安心して読めるのです。
主婦、主夫の両方の心理描写が上手い奥田センセ。
私は前から老若男女の心理がわかるのはなぜかと疑問に思っていました。
その答えが見つかりました。
「会社員時代は単独行動好きの偏屈者を言われてきた。それが今では役にたっている。ユーモア小説は覚めた視線でないと書けない。リアリストでないと、人の滑稽さがわからない」(妻と玄米御飯」より)
なるほと、これはセンセご自身のことですね。納得です。

純平、考え直せ  ★★★★

(2014年4月5日再読)

純平、考え直せ純平、考え直せ
(2011/01/20)
奥田 英朗

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(STORY)
純平、21歳。やくざの下っ端をしている。ある日、組長から「鉄砲玉(暗殺)になってくれ」と言い渡された。
命令を受けたからにはやってやる!これで男になれると喜びをかみしめた。決行までの執行猶予は3日間。自由時間が与えられ、羽を伸ばした。その間、ガールフレンドの加奈が純平を止める方法はないかとネット掲示板に書いたことが、反響を呼んだ。


(REVIEW)
家庭に恵まれず、チンピラの世界に入った純平。
喧嘩早く、気風がいい純平に「鉄砲玉になってくれ」との命令が下った。
鉄砲玉、つまりヤクザの社会において、敵対する者を撃ってこいとのこと。
ヘタすれば、自分もやられてしまう。生き残れたとしても、刑務所行きは確実。
でも、純平は「行きます。命、捨てます」と言い切った!
男だね、純平!上の思惑は考えず、自分が役に立つこと喜んでいるとは・・
純粋でまっすぐな彼の性格に泣けましたわ。

ここまでなら、先の短い男の悲哀ものですが、そうはさせないのが奥田マジック。
コミカルな部分と心温まる場面も用意しているのです。

純平の彼女、加奈がネット掲示板に「純平を止める方法を教えて」と書いたことが、大反響呼んだ。
やめる方法を書く人もいれば、面白がるヤツもいる。
ほら、これだけの人が君のことを心配してくれているんだよ。
さあ、バカなことはやめなさい。

これで、純平が心を動かされたかというとそうではない。
様々の人々の出会いで、彼が考えを変えると思えばそうでもない。
さあ、本当に決行するのか?

彼の性格からいくと、決行せずにはいられないだろう。
要領のいいヤツだったら、どうにかして逃れる方法を考えるけど、彼は決して意思を曲げることはしないだろう。
現代に忘れかけていた義理人情。
人はひとりではない、どこかで心配してくれる人がいる。
ほんのりと忘れかけていたものを感じさせてくれる一冊でした。

町長選挙 ★★★☆

(2014年3月1日再読)

町長選挙町長選挙
(2006/04)
奥田 英朗

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(Story)
今日も伊良部総合病院の地下にある神経科に患者が訪ねてくる。今回の患者は人がうらやむカリスマの方々。そして、伊良部先生の活躍の場は、遠く離れた島の町と広がり・・。


(Review)
伊良部シリーズ第三弾。
今回の患者は時の人、カリスマと呼ばれる人。プラス、小島に赴任した公務員であります。

今回の患者と詳しく申しますと、
不眠、暗所、閉所、フラッシュ恐怖症の新聞社の会長であり、プロ野球球団のオーナー。
ひらがなが書けない、若年アルツハイマーのIT企業の社長。
アンチエンチングの強迫観念の女優。

野球オーナーの不眠、暗所、閉所、フラッシュ恐怖症は、永眠、棺桶、天国をイメージするため恐怖になる。
その恐怖をひたすら威張っていることで隠している。
年よりでそういう人がいるよね

ITの社長はパソコンや携帯のやりすぎで字が書けなくなること。
私も字を度忘れすることがありますわ。

アンチエンチング強迫観念・・これ、わかる。
老いが怖い、太るのが怖い、エネルギー消費しなきゃ!!!これ、あたしじゃん。

↑の3人は、時の人がモデル。
カリスマともてはやされても所詮は同じ人間。
身近に感じたり、思い当たることがあります。

さて、最後の町長選挙だけはカリスマとは程遠い、気弱な公務員。
舞台は小島の町の抗争だけど、これって、日本や世界に置き換えることもできる。
その紛争を仲裁役になるのか?伊良部センセ。

カウンセラーはしない、ビタミン剤を打つ、行動を共にするという点は同じだけど、
前のシリーズと比べると、伊良部先生、おとなしすぎるではありませんか?
羽目を外しまくった前回の強烈な印象が深いです。
でも、その分、患者のキャラを掘り下げて描いています。

ある時はガンコジジイだったり、オレサマ社長だったり、美意識の強い女性だったり、普通の気弱な一般人だったり、それぞれの心情をうまく描いている奥田センセって、一体何者ですか?^^



空中ブランコ ★★★★★

(2014年2月26日、再読)

空中ブランコ空中ブランコ
(2004/04/24)
奥田 英朗

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(Story)
今日も伊良部総合病院に地下にある神経科に患者が訪ねてくる。ジャンプが飛べないサーカス団員、尖端恐怖症のヤクザ、イップスに苦しむ野球選手、心因性の女流作家・・さあ、伊良部先生の診療のはじまり、はじまり!


(Review)
伊良部シリーズ第二弾。直木賞受賞作。

今回の患者は、サーカス団員にヤクザ、野球選手の作家さん、伊良部先生の同級生の方まで。
一般人患者の前回に比べると、特殊職業の方々ではありませんか。
プライドの高そうな方ばかり、どう対応されるの?伊良部先生。

はい、前回と同じ、カウセリングなし、まずビタミン注射を打ちます。
生い立ち?性格?訊いてどうするの?そんなもの変えられません。
どうするかって?前回と同じ、先生も一緒になって行動します。
空中ブランコ挑戦してみたり、野球を始めてみたり、小説を書いてみたり・・
おいおい、遊びではないんだぞ!と言いたくなるけど、そこが大事なのです。

伊良部先生の子供みたいな行動は、ばからしいと思いつつも、つい彼のペースにはまってしまいます。
そして、あっと気づくことがあります。

最初は好きは始めたことも、壁に突き当たってしまうもの。
何気ない日常も我慢して、知らず知らずに無理してしまうもの。
順調な人ほど、はばかる壁が高く、もがいても、もがいても深みにはまるばかり。
自分で気づけばいいけど、気づかないから悩むのです。

悩める患者のみなさま、読書のみなさま。
はめをはずして、初心に、童心に戻りませんか?
楽しかった頃に自分を取り戻しましょう。

読み終わった後、すっきり。なんて、すがすがしい気分!
今回も伊良部先生からビタミン剤をたくさんもらいました。ありがとうございました。

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