ラムの映画&本ライフ

ラムの趣味である映画と本のレビューです。★5で満点、10通りに評価しています。
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絶対泣かない ★★★★

(2015年5月16日再読)

絶対泣かない (角川文庫)
絶対泣かない (角川文庫)山本 文緒

角川書店(角川グループパブリッシング) 1998-11-19
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(STORY)
社長の秘書として転職してから、まもない私は女社長から怒られてばかりいる。ある日、女社長が子供の頃いじめた同級生であることに気づく(「絶対泣かないー秘書ー」)
仕事をしていると楽しいこともある、辛いこともある、泣きたいこともある。働いている女性たちの人知れぬ心の戦いを描いた、表題を含む15の物語。


(REVIEW)
フラワーデザイナー、教師、デパートの店員、漫画家、営業部員、
専業主婦にエステシャンなど世の中には様々な仕事があります。
自分の夢に向かっている人。
仕事に誇りを持っている人。
自立のための人。
お金の為に仕事をしている人、そうでない人。
適職の人もいれば、逆の人。
仕事が好きな人、そうでない人もいる。
働いていると悩みは仕事ばかりではない。
人間関係や恋の壁にぶち当たったり、、プライドを捨てらず、
コンプレックスに悩まされ、泣きたくなることもあります。

本書に描かれている15の職業についた主人公たちは、
特別な才能をもっている人たちではない、普通の人たち。
等身大で描かれているからこそ、共感しやすいです。
職場で悩んだり、傷ついたり、泣きたかったり・・・
いわゆる彼女たちは夢に向かって頑張る物語なのねと思ったらどっこい。
山文さんお得意の毒を振りかけるから一味違うのです。

彼の妻になることがどういうことを指すのかわかっていた。私は彼の「恋人」ではなく身内になるのだ(「愛の奇跡ー専業主婦ー」)
今の仕事は自由でいい。(中略)自由の代償は孤独だった。(アフターファイブ -派遣、ファイリングー」)
私が美しくないのはお金のせいではない。「自信」というダイヤモンドを彼女がもっているとは逆に、私は「卑屈」という名の生ゴミを胸の中でもっているのだ。(「絶対泣かないー秘書ー」)


なと、リアルすぎるほどの本音がちらり。
自分も思い当たることがあるなと共感しました。

仕事をしていると、楽しいことばかりではない。
ほら主人公たちも、悩みながらもがんばっている。
思い通りにいかないのは自分ばかりではないのだと・・。

生きていると、いいこともあるんだなと(「今年はじめての半袖ーデパート店員ー」)
辞める時はいつでも辞めれる(「絶対泣かないー秘書ー」)

など、心にビタミンを投与してくれるので元気がでます。

困難に直面している人、悩んでいる人、一読いかがですか?

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ブラック・ティー ★★★★★

(2015年5月11日再読)

ブラック・ティー (角川文庫)
ブラック・ティー (角川文庫)山本 文緒

角川書店 1997-12
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(STORY)
電車の網棚の荷物を置き引きをした後、財布の中身だけを抜き取って生活してきた。働くことに疲れた私は、窃盗しないと生きてはいけないのだ。ある日、網棚にブラックティーというバラの花束を見つけた(「ブラックティー」)
表題を含む、胸が痛む10の短編集。


(REVIEW)
罪は何も法律にひっかかるものばかりではない。
約束を破ったり、人の者を借りたままだったり、裏切ったり、自由を奪ったり、盗聴したり、
ほら思い当たることがあるでしょう。
自分で無意識のうちにしていたり、人を傷つけたり、逆に傷つけられたり。
本篇はそんな小さな過ち(犯罪のものもある)を描いています。

お話の主人公のみなさま。
心が病んでいるか、ひねくれていますね。
最初はそうではなかったでしょう。
普通に生きて、夢があって、人生を描いていたはず。
しかし、どこでとう歯車が狂ってしまったのか。
職場で、恋で、結婚で、家庭で・・心を崩してしまったです。
その原因が、一見何事もなく普通に見えるからこそ、質が悪いのです。

「ブラックティー」と最終輪の「水商売」は、都会でひっそりと生きる姿は孤独であり、
どんな状況であろうとも生きようとする姿はたくましく感じたり。

恋に狂ったり、恋人を裏切ったり、借りたものを返さなかったり、
いじめられている姉のためにしたことが取り返しのつかないことになったり・・
主人公たちの心の叫びが痛々しく感じてなりません。

「人って怖い。私は自分のことを棚に上げてそう思った。本当は怒っているようで怒ってない人がたくさんいたのだ。人の記録力のよさや生真面目さが怖かった」
「自覚のないうちに価値観を刷りっこまれて生きてきたのだ。そのことを気づかずに生きてしまった自分に腹を立てたのだ」


ここまで書くかとリアルな表現がたまらない。
好かれている主人公や綺麗すぎる世界もバッサリと、
人の奥底に潜む心理もグサリと書き込む。
その毒がたまりません。

毒は毒を制するとはよくいったもので、
落ち込んだ時、変に慰めるような話よりは薬になります。
心に響くものがあります。

だから山文わーると、好きです^^



みんないってしまう ★★★★

(2015年5月6日再読)

みんないってしまう (角川文庫)
みんないってしまう (角川文庫)山本 文緒

角川書店 1999-06
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(STORY)
街中で幼馴染と再会した日、ひとり暮らししている部屋でふと思う。学生時代、家族・・みんないってしまうだなと空しくなった(「みんないってしまう」より)
表題を含めた、喪失感を乗り超え、いとしくも悲しい自分探しの物語。


(REVIEW)
タイトルから空しい物語だなと想像できるような、喪失感を集めた短編集。
大人になるにつれ失っていくもの、
恋であったり、友情であったり、家族であったり.
失くすのはそればかりでははく、
「理性を失う女性」「100点でなくてもいい人生」など、
自分の中で何かが失っていく主人公たちが描かれています。

「みんないってしまうだな。(中略)この手のひらに確かにあったものがみんな崩れ去ってしまった。
永久に続くかと思っていたもの。(中略)みんな過去になってしまった」(「みんないってしまう」より)
大人になるにしたがって、失うものがあり、逆に出会いもあります。
それは当たり前のことなんだけど・・・・頭でわかっていても感情がついていけないから切なくなのです。
私も最近、親しかった人と疎遠になったり、鬼籍に入ったり、
楽しかった思い出たちが遥か過去に感じると、空しくなることがあります。
そう、大切なものを失うことの恐怖、喪失感。
本書では、その心理を描いているので共感するのです。

人間らしい感情を失ったり、自殺願望を持ったり、人生をリセットしてくなったり、
ああ、心まで病んでしまった人もいて、
山文さんのキャラはひねくれているか、心が病んでしまうか。
わかる、それ。私も実はあった・・!と共感してしまう。
はい、本書も読んでいくうちにキャラの投影する自分がいました。

せつないのは自分だけではないこと、
今の生活がどれだけ大切なことかを改めて感じさせてくれます。

しんみりさせるけど、嫌な気持ちにさせることはない山文わーるど。
悩んているあなた、一読あれ。

ファースト・プライオリティー ★★★★★

(2015年4月17日再読)

ファースト・プライオリティーファースト・プライオリティー
(2002/09)
山本 文緒

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(STORY)
社交性のない私は職場でも友人からも疎遠になっていく・・(「偏屈」)
私は空が好きだ。空にいたいと思いから気象予報士になったが、就職先をいとも簡単に辞めてしまった(「空」)
31歳の女性の31通りの優先先事項を描いた短編集。


(REVIEW)
自分で思い通りにならなかった時、
ふと空しくなった時、
手に取りなくなるのが山文さんの本です。

本書は31歳の女性たちの31通りの話。
31人、皆それぞれ境遇の違えば、優先順位も違う。
仕事、恋人、友人、家族と答える人が多いでしょう。
でも、彼女たちの優先順位は車だったり、空であったり、旅であったりするのです。

「頭では理解している。でも感情がついていけない」
「人として重大な欠陥があるとしても、人に迷惑をかけているわけではない」
「私みたいな人がいるから小説家やカウンセラーがいる。でも、周りには見当たる人がいませんが・・」
頭ではわかっていても、自分で行動に移すのは難しく、まして、周りの理解を得るのも大変。
少数派になればなおさら。
上手く切り抜けて、要領よく生きる人もいるでしょう。
勤勉、勤労、結婚、出産・・一般的には当たり前と言われている人生のレールを、すべての人が乗れるわけではない。
ほら、レールに外れる人も
本書を読むと、ほら・・自分にも思い当たることがあるはず。

31人の主人公たちは大事なものを優先するあまり、不器用にならざる得ない。
思い通りにならない、上手く生きれない。
そんな不器用な、31歳31人たちが主人公たち
彼女たちのきめ細やかな心理描写はまるで自分と合わせ、
自分ひとりではなかったんだと思わせてくれる。
読了した後、ビタミン剤をもらう一冊、自己啓発書より救いになります。

人生に悩んでいる方、是非とも一読あれ。

あなたには帰る家がある   ★★★★★

(2015年3月11日再読)

あなたには帰る家がある (集英社文庫)あなたには帰る家がある (集英社文庫)
(1998/01)
山本 文緒

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(STORY)
結婚して1年半、幼い子供を抱える専業主婦の真弓は生命保険に就職した。
ハウジング会社勤務の真弓の夫、英明は、家の立て直し計画をしている茄子田家と知り合う。
英明は茄子田の妻、綾子に妻にはない穏やかさに惹かれはじめ、また亭主関白の夫を持つ綾子も同じ気持ちになる。
一方、真弓は茄子田に保険の契約をこぎつけようとする。


(REVIEW)
10年以上も前に読んで以来、ご無沙汰の山文さんの作品です。
作品自体は94年だから、もう20年以上前ですが、
古さは感じさせない、今読んでも共感が持てる作品です。

マンションに住んで、可愛い子供がいる佐藤夫婦。
一方、三世代の家の立て直しを考えている茄子田夫婦。
どちらも一見、幸せそうな家庭ですが、蓋をあけてみると・・

佐藤夫婦は専業主婦の妻が主婦業の不満、社会に取り残される不安と焦りから働きはじめた。
しかし、共稼ぎの大変さがあり、お互い不満が募るばかり。
一方、茄子田家は妻は大人しく従順なものの、女癖の悪い亭主関白の夫、嫁が気に喰わない姑、競馬競艇が好きな舅、2人の息子たちの問題をかかえている。

隣の芝生は青いとよく言ったもので、見た目は幸せそうであっても、実はそうではない。
理想と現実。なりたかった自分。
人生ことが上手く運ぶかと思えばそうではない。
夫や妻にないものを惹かれはじめ、不倫に走る。
二組の夫婦が壊れかけた時、さあどうするか?

リアルすぎてゾッとする怖さ、解き放つ毒。
ひとりひとりの心情を丁寧に描いているため、誰を肩入れせずにサラリと読める。
これが山文わーるど!なのです。
最後は元のサヤに収まりますが、決してハッピーエンドで終わりません。
これが現実ではないでしょうか。

どんな家庭にも悩み、問題があります。
だから、幸せの理想の家庭を描いたものを読むと悲観的になりますが、山文さんの作品はその逆。、
毒は毒を制するというのように、山文さんの毒が癒しに変わるのです。
自分ひとりが不幸ではないと思わせてくれる。
だから、山文さんの作品は好き。また読みたい一冊です。

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